〜 カフェオレ屋台奮戦記 〜



青春編:エピソード5 「保健所」


「ふ〜〜っ。やっぱりタバコはセブンスターに限るな…」

ボサノバ。自家製カフェオレ。コンビニのクロワッサン。心の中のバスローブ。
そして「食品衛生責任者講習修了証」を手にしたボクには、海よりも深い心の余裕。
11月の日曜日。タバコの煙と戯れながら、アンニュイなひととき。

そこへいつものように情熱カラ回りの男ダイ。
「おおっ!なんか余裕じゃん。」
「まーね。ボクちんには、この『修了証ちゃん』がいるから。」
「アニィ、あれから2週間経つけど、保健所行ったのか?」
「えっ?」

翌日。休みをとったボクは、意気込んで家から徒歩3分の中保健所へ。
こんなに近いのに今まで来た記憶ナッシング。古ぼけた素っ気無い建物は、なんだか入り難い。
ハッ?!と我に帰ると、「やっぱり役所っつーのは… ブツブツ」なんて、ナイス・ミドルな独り言。
中へ入ると当日は予防接種かなんかをやってたらしく、ロビーはベイビーを抱えたヤングマザーで一杯。
この光景って微妙にエロいな…なんて余計なコトを考えつつ、ボクはタイムボカンシリーズ系の
『ポチッとな』ボタンのついた旧式エレベータに乗り込んで、3階にある目的の食品衛生課へ。
そして、その数秒後、ボクの魂の叫びが保健所にこだました。

「ええぇぇ〜〜っ?!マジッスかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ?!」

「そうなんですよ。法律が変わってから、横浜では屋台の申請はなかなか通らないんですよね。
         多分、無理だと思うから、やめといた方がいいと思いますよ。」
ガーーーーーーン!!ショック!!英語で言えばSHOCK!!
ボクの頭の中の黄金の城はガラガラと音を立てて崩れ落ち、気付いた時には砂漠とサボテンのみ。
ボクは、カラカラに渇いた喉を振り絞って辛うじて一言だけ吐き出した。
「……み、み、水…」
っていうのはウソで、ホントはこう。
「………ど、どうすればいいんですかね?」
そしてその時、またしても荘厳なパイプオルガンの音色が鳴り響いた!アーメン。
「君、実家の横でやるんでしょ?それなら、家の中にもう一つキッチン作って喫茶店営業の
    許可申請したらどうですか?喫茶店営業の許可なら9600円で申請できますよ。」
う〜ん。なんてデリシャスなお答え。人生万歳!
ボクの実家は酒屋をやってるため、家庭用キッチン以外に始めからもう一つキッチンがあるのだ!
ボクはカウンターごしにキラキラ輝いて見える受付のオジさんにキスする勢いで叫んだ。

「んじゃ、喫茶店営業の許可申請をしたいんスけど!」

「店舗の図面は?」
「えっ?」
「法人申請?」
「えっ?」
「食品衛生責任者は?」
「はい!はい!コレ、講習修了証。」
「写真は?」
「えっ?」
「………。」
「………。」

トボトボと保健所を出たボクは、スグにダイに電話。そして絶叫。
「ママァ〜〜〜〜〜〜ァァッ!」
「どうした?アニィ。なにがあったんだ?」
「……ほ、保健所でイジめられた。」
「まぁそうヘコむなって。明日があるじゃねーか!」
「泣けるぜ、オイ。でも、涙の味ってしょっぱいんだな…」
「よっしゃ!こーなったら今日は朝まで飲もうぜ!」
「いいねぇ!どこの店で待ち合わせる?」
「……ところで、ボク、ノーマネーなんですけど…」
「ええっ?!またッスか!」
 
カフェオレ屋台は今日もどしゃぶり。明るい未来はやってくるのか…
 






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